シークレットウィンドウ

こんにちは。
もうすっかり夏ですね^^;

本日はサスペンス映画のこの一本。

『シークレットウィンドウ』


【あらすじ】
スティーヴン・キングの『秘密の窓、秘密の庭』を基に『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』のジョニー・デップを主演に迎えて描く戦りつのミステリー。監督は『パニック・ルーム』や『スパイダーマン』で脚本を務めたデビッド・コープ。脇を固める俳優もジョン・タトゥーロマリア・ベロらの個性派ぞろい。最後まで予測不可能な結末は、キングの原作とは異なる新たな衝撃。

どしゃ降りの雨の中、モート・レイニー(ジョニー・デップ)はモーテルの前に車を横付けにし、異常な興奮状態でドアをけ破った。そこには彼の妻エイミー(マリア・ベロ)がテッド(ティモシー・ハットン)と一緒にいた。

【感想】

ハリウッドのトップスター、ジョニー・デップ。異例のメイクで観る者を唖然とさせる第一人者。しかしもちろんそれだけではない、彼には出演する映画は全て彼の色に染め上げてしまうほどの圧倒的なカリスマと驚愕すべき演技力があります。今日はこのジョニデがスティーブン・キングの原作に挑んだこの映画のレビューです。

今日のお題目は「シークレットウインドウ」です。

この映画も思ったより評価が低めですね。私個人としてはよく出来ている作品だと思いますが。

確かにストーリーはよくあるタイプのもの。しかもサスペンス映画好きであるならば、事件の真相はある程度早くから感づいてしまうかも。一応どんでん返し系の作品ではあるのですが、どこかで見たような話だという既視感を感じてしまい、驚愕とまではいかない。それ故にキング作品としても物足りなく思えてしまうのでしょうね。

今日のレビューは完璧ネタばれです。以下核心に触れてしまう箇所もありますので、まだこの映画未見で、興味がある方はお読みにならないでくださいね。


妻を寝取られてしまうような、ダメ男であるミステリー作家、モート・レイニーの家へ、ある日一人の男が現れる。この男ジョン・シューターも、レイニーと違って売れてはいないが作家の一人。シューターはレイニーに俺が作った話を貴様が盗みやがったと難癖をつける。最初は相手にしなかったレイニーだが、常軌を逸したこのサイコな脅迫者の行動に身の危険を感じ始める。やがて彼の不安は的中し、遂に殺人事件にまで発展する───。

いわゆる多重人格をモチーフにしたサスペンス映画は山ほどあります。生まれついての多重人格者、何かの事件をきっかけにもう一人の自分が突然目覚めるパターンの後天的なタイプ、様々です。しかしその当事者が作家だというケースは案外少ない。

考えても見れば、想像の世界で生きる職業が作家です。彼らにとっては想像力こそが最大の武器。自分たちの産み出した小説の主人公たちに彼らは知らず知らずのうちに乗り移る。小説の主人公たちが何を考え、どう行動するのか、それを見極めて文章にしていくために。もちろん同時に客観性も失うわけにはいかないでしょう。小説というのは不特定多数の方に読んでいただくものなのですから。この客観性という要素があるからこそ、小説家は小説家でいられるのです。

しかし、もし客観性がなくなってしまったらどうなるか。それは自分が作ったキャラクターが勝手に行動を起こすことに外なりません。本作の怖いところはまさにこの部分です。

一度見ただけでもかなり面白い映画だとは思うのですが、二度見てみると実に感心するような構成に気付かされます。オープニングクレジットで、湖面をすれすれに映し出し、岸辺に建つレイニーの家の窓から屋内に入り込んでいくカメラ。やがてそれはずっとワンカットのまま、鏡に映し出されたソファーにだらしなく寝ているレイニーを捉える。そして驚くべきことにカメラはそのまま鏡の中に入っていってしまう。そこで登場するシューター。

逆に終盤、鏡に映ったレイニーの元妻エイミーの車が家の前に到着するシーン。この時もカメラは鏡の中に入り込み、窓を抜けて車から降りたエイミーを映し出す。

言うまでもなく最初の鏡の中は、主人公レイニーのイカレタ頭が生み出した妄想の世界。そして終盤のエイミーの場面は現実の世界です。この鏡をすり抜けるような映像で、現実と非現実を描写しているわけです。
誰にも開けてはいけない秘密の窓がその心の奥底に眠っている。この窓の向こうにあるものは、決して呼び覚ましてはならないもう一人の自分。人生のどん底に突き落とされたような情緒不安定な作家が、その職業柄、知らず知らずの内にこの禁断の窓を開いてしまったことによる恐るべき物語が本作なのです。

こうした一人のイカレタ作家の心理、何が現実で何が妄想なのか、これを描く方法が先の鏡の内外など、実に計算されている。そこここに散りばめられた伏線も見事。発狂寸前のレイニーが壁に向って投げ付けた大理石の灰皿によってできた傷から、壁、そして天井に広がっていくクラック。これはついに行き着くところまで行ってしまった不幸な男の精神そのもの。

この精神に異常をきたしていく作家をジョニデがこれ以上ないくらいの名演で魅せてくれます。この抜群の演技力、明らかに顔だけを売り物にする三流役者とは違う。それにシューターを演じるジョン・タトゥーロの抑えた演技。絶対に関わってはいけない危険人物をこれまた最高の不気味さで演じている。

全てが解決してスッキリしたラストのレイニー。これが最も怖い。決して呼び覚ましてはいけない自分が表舞台に立ってしまったのですから。

ジックリとご覧になって下さい。もっと認められてもいい作品だと思います。

本日はこのジョニーデップの着ていたガウンをご紹介、

と言いたいんですけど…
この手のガウンは古着にしかないんで似た感じが見つけられなかったんです^^;
また探して見つかったら更新しますね^^;